働く女性のストーリー — ロールモデルの見つけ方
「社内にロールモデルがいない」。多くの女性がそう感じています。でも、ロールモデルは「完璧な一人」を探すものではありません。現実的な見つけ方と活かし方をまとめました。
そもそもロールモデルとは
ロールモデルとは、考え方や行動のお手本になる人のこと。キャリアの文脈では「この人のようになりたい」と思える先輩像を指します。ロールモデルがいると、キャリアの選択肢が具体的に想像でき、「自分にもできるかもしれない」という自己効力感が育ちます。
逆に「管理職=長時間労働で家庭を犠牲にする人」しか見たことがなければ、昇進の打診を断りたくなるのは自然なこと。ロールモデル不在は個人のやる気の問題ではなく、選択肢が見えていないという情報の問題です。
ロールモデルは「部分採用」でいい
「尊敬できる完璧な一人」を探すと、たいてい見つかりません。境遇も価値観も完全に一致する先輩など存在しないからです。現実的なのは、要素ごとに複数の人から借りる「部分採用」です。
- 働き方はAさん——時短勤務でも成果を出す仕事の絞り方
- 両立の工夫はBさん——夫婦の分担と外注の使い方
- キャリアの作り方はCさん——異動や転職のタイミングの判断
- 生き方の姿勢はDさん——他人と比べない軸の持ち方
「あの人のようになりたい」ではなく「あの人のあの部分を真似したい」と考えると、身近な人の全員が部分的なロールモデル候補になります。完璧な人を探すのをやめた瞬間、お手本は一気に増えるのです。
身近なロールモデルの見つけ方3選
- 半径5メートルから探す——職場の先輩・取引先・ママ友・親戚。「その選択、詳しく聞かせてください」という一言は、相手にとっても嬉しい質問です。人は自分の経験を役立ててもらえると喜ぶもの。遠慮はいりません
- 地域のイベント・セミナーで探す——登壇者は「地元で実践している人」の宝庫です。講演後の質疑や交流タイムは、雑誌に載る有名人ではなく等身大の実例に出会える貴重な機会。宇都宮でも女性向けのセミナーや交流イベントが開催されています
- 発信から探す——働く女性のブログやSNS、企業サイトのインタビュー記事。特にワーママの体験談ブログは、時系列で悩みと選択のプロセスが読める「疑似ロールモデル」として優秀です。読むときのコツは後述します
先輩に聞くと参考になる質問
いざ話を聞ける機会があっても、「すごいですね」で終わってしまってはもったいない。答えが自分の材料になる質問を用意しておきましょう。
- 「一番迷った選択は何でしたか? 最後の決め手は?」——結果ではなく判断のプロセスにこそ再現性があります
- 「やめたこと・手放したことはありますか?」——両立の秘訣は、足したことより捨てたことに表れます
- 「あの時に戻れるなら、自分に何と言いますか?」——後悔と教訓を一度に聞ける質問です
- 「私と同じ立場だったとき、何が一番不安でしたか?」——今の自分の不安が「通過点」だとわかるだけで軽くなります
体験談・ブログから学ぶときのコツ
ワーママのブログやSNSの体験談は身近で参考になる一方、読み方を間違えると「あの人はできているのに自分は…」と落ち込む材料になります。3つのコツを意識してください。
- キラキラ投稿は「ハイライト集」と心得る——発信は人生のダイジェスト版。映っていない失敗や外注の存在を差し引いて読む
- 状況の違いを先に確認する——実家のサポート有無、夫の勤務形態、職場の制度。前提が違えば再現できなくて当然です
- 感情ではなく「工夫」を1つだけ持ち帰る——「すごい」で終わらせず、「朝の準備を前夜にやる」など、明日から試せる具体策を1つ抜き出す
「かっこいい生き方」は人の数だけある
「かっこいい女性の生き方」と聞くと、バリバリのキャリアウーマンを想像しがちですが、実際に話を聞いて回ると、かっこよさの正体は肩書ではなく「自分で選んだ」というプロセスにあります。管理職を目指す人も、あえて現場を極める人も、一度キャリアを離れて戻ってきた人も、地元に帰ることを選んだ人も——選択の理由を自分の言葉で語れる人は、例外なくかっこいい。
30代は「このままでいいのか」と迷いやすい時期ですが、迷うこと自体が、選ぼうとしている証拠です。他人の正解ではなく、自分の選択理由を作るための材料として、先輩たちのストーリーを使ってください。
ロールモデルとメンターの違い
似た言葉に「メンター」がありますが、役割が違います。ロールモデルは「見て学ぶ」相手、メンターは「対話して学ぶ」相手です。ロールモデルは本人の了解すら不要(一方的にお手本にすればいい)なのに対し、メンターは定期的に相談に乗ってもらう継続的な関係。まずはロールモデルの部分採用から始めて、特に学びの多い相手がいたら「ときどき相談させてもらえませんか」とメンター的な関係に育てていく、という順番が自然です。
あなたも誰かのロールモデルになる
最後に、視点を一つだけ反転させてください。あなたが「ロールモデルがいない」と感じているのと同じように、あなたの後輩も「いない」と感じています。時短勤務で働き続けているだけで、復職して1年乗り切っただけで、その姿は誰かの「できるかもしれない」の根拠になっています。
特別な実績は要りません。聞かれたら選択の理由を話す、失敗談を隠さない——それだけで、あなたは誰かの部分的なロールモデルです。「見せられるほどのキャリアじゃない」と感じている人の等身大の話こそ、いちばん参考にされるのですから。
よくある質問
Q. 社内に女性の先輩が一人もいません。
社外に目を向けましょう。業界団体・交流会・オンラインコミュニティには、同じ職種の先輩が必ずいます。また、ロールモデルは同性である必要もありません。「時間の使い方は男性の上司から学ぶ」のも立派な部分採用です。
Q. 有名人や本の著者をロールモデルにしてもいい?
もちろんOKです。ただし有名人は成功後の姿だけが見えるため、「迷いのプロセス」は身近な人から、「視座や考え方」は有名人・書籍から、と使い分けるとバランスが取れます。伝記やインタビュー本は、無名時代の試行錯誤が書かれているものを選ぶのがコツです。
Q. 学んだことを忘れてしまいます。活かすコツは?
「ロールモデルノート」をおすすめします。人の話やブログで「いいな」と思った工夫・言葉・選択理由を、1行ずつメモしておくだけのノートです。ポイントは人物ごとではなくテーマごと(働き方・両立・お金・心の持ち方)に貯めること。迷ったときに該当テーマを見返すと、複数の先輩の知恵が自分用の辞書になっています。
Q. 話を聞きたい人がいますが、お願いするのが失礼な気がして。
「30分だけ、キャリアの選択について伺いたい」という具体的で控えめな依頼を断る人はほとんどいません。頼られることは、相手にとっても悪い気がしないものです。お礼はコーヒー1杯と、後日「あの話をこう活かしました」という報告で十分。この報告が、関係を次につなげる一番のお礼になります。