企業の女性活躍推進ガイド
「何から始めればいいかわからない」という人事・経営者の方へ。法対応 → 認定 → 助成金 → 社内浸透の順で、実務の全体像をまとめました。
女性活躍推進法をわかりやすく
女性活躍推進法により、常時雇用101人以上の企業には一般事業主行動計画の策定・届出・公表が義務付けられています(100人以下は努力義務)。やることは大きく4つです。
- 状況把握:採用者に占める女性比率、男女の平均勤続年数の差、労働時間の状況、管理職に占める女性比率の基礎4項目を確認
- 課題分析と数値目標:自社のボトルネックを特定し、「2028年までに女性管理職比率を15%に」のような数値目標を設定
- 行動計画の策定・社内周知・外部公表:計画期間・目標・取組内容を記載し、社内に周知、厚労省データベースや自社サイトで公表
- 労働局への届出:策定・変更から遅滞なく届出
一般事業主行動計画の書き方のコツ
厚労省の記入例をなぞるだけの「作って終わり」の計画が最も多い失敗です。コツは、目標を「採用」「定着」「登用」のどこに課題があるかで絞ること。たとえば「女性採用は多いが5年で辞める」なら定着(両立支援)が課題であり、管理職比率の目標だけ立てても届きません。数値は背伸びしすぎず、達成したら次の計画で引き上げる方が、社内の信頼を保てます。
えるぼしとくるみんの違い
| えるぼし | くるみん | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 女性活躍推進法 | 次世代育成支援対策推進法 |
| テーマ | 女性の活躍推進 | 子育てサポート |
| 評価軸 | 採用・継続就業・労働時間・管理職比率・多様なキャリアコースの5基準 | 育休取得率・労働時間など、子育て支援の取組と実績 |
| 段階 | 1〜3段階+プラチナえるぼし | トライくるみん・くるみん・プラチナくるみん |
| 共通のメリット | 求人票・採用サイトでのアピール、公共調達での加点評価、企業イメージ向上 | |
採用市場では、求職者(特に若手女性)が認定マークを企業選びの目印にする動きが定着しつつあります。「うちの規模で取れるのか」と思われがちですが、中小企業の取得事例は年々増えています。まず自社の現状値を5基準に当てはめて、どこが足りないかを見るところから始めましょう。
使える助成金(両立支援等助成金など)
女性活躍・両立支援の取り組みには、国の助成メニューが用意されています。代表的なのが両立支援等助成金で、男性の育休取得促進、育休からの復帰支援、育休中の代替要員確保、不妊治療や介護との両立支援など、複数のコースがあります。
実務のコツは「制度を作ってから申請」ではなく「申請要件から逆算して制度を作る」こと。要件には就業規則への明記や労働者への周知など、後からでは満たせない手順が含まれることが多いためです。年度により内容が変わるので、着手前に最新の支給要領を確認し、社労士に相談するのが確実です。
女性管理職を増やすには:育成と研修
「候補者がいない」の多くは、育成の仕組みがなかった結果です。打ち手は3層に分けて考えます。
- 本人向け:女性管理職研修・リーダーシップ研修。昇進をためらう背景には「自信のなさ」より「管理職の働き方が両立不能に見える」ことが多い。管理職の働き方改革とセットで
- 上司向け:アンコンシャスバイアス研修。「子育て中だから出張は無理だろう」と先回りして機会を奪う「配慮のつもりのバイアス」が典型例。機会は本人に選ばせるのが原則
- 組織向け:ロールモデルの見える化。社内報やイベントで多様な管理職像を示し、「ああなりたい」の選択肢を増やす
アンコンシャスバイアス研修とは
アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)に気づき、行動を変えるための研修です。効果を出すポイントは、座学で終わらせず自社の実例(評価・配置・声かけ)に落とすことと、管理職から先に受けることの2つ。「気づいたら終わり」ではなく、会議や評価の場での具体的な行動ルールまで決めると定着します。
今日からできる一歩:イクボスという考え方
部下の育児・介護・ライフを応援しながら、組織の成果も出す管理職=イクボス。宇都宮市を含む多くの自治体・企業がイクボス宣言に取り組んでいます。宣言はゴールではなくスタートですが、「うちの会社は両立を応援する」というメッセージを社内外に示す手段として、コストゼロで今日から始められます。
よくある失敗パターンと最初の90日
女性活躍推進の取り組みには、定番の失敗パターンがあります。先に知っておくと回避できます。
- 「作って終わり」の行動計画——届出のためだけの計画は、社員の目に触れず、何も変えません。計画は社内に発信し、進捗を年1回でも共有することで初めて機能します
- 女性側だけに研修する——本人向け研修だけ実施して、上司や評価制度が変わらないパターン。「変わるべきは組織」という順番を間違えると、対象者の疲弊で終わります
- 数値目標の独り歩き——「管理職比率◯%」だけが先行すると、準備のない登用で本人が苦しみ、「やっぱり無理だ」という空気を残す最悪の結果に。登用の手前の育成・業務設計とセットで
最初の90日でやること(おすすめの順番)
- 1か月目:基礎4項目(採用比率・勤続年数差・労働時間・管理職比率)の現状値を出し、経営層と共有
- 2か月目:女性社員へのヒアリング(辞めた人の理由が取れれば尚可)。課題を「採用・定着・登用」のどれかに特定
- 3か月目:行動計画のドラフト作成と、使える助成金の確認。認定(えるぼし・くるみん)取得を目標に置くと、やることが基準として明確になります
よくある質問
Q. 女性活躍に取り組むメリットは、正直あるのでしょうか。
採用力の向上(応募者数・辞退率の改善)、定着率の向上による採用・教育コストの削減、公共調達での加点が、数字に表れやすい直接効果です。人手不足が続く地方の中小企業ほど、「選ばれる会社」になるための投資として効果が出やすい領域です。
Q. 取り組みは採用広報にどう活かせますか?
行動計画・認定マーク・育休取得実績は、求人票と採用サイトに「数字で」載せてこそ効果を発揮します。「アットホームな職場です」より「育休取得率100%・復帰率100%(直近3年)」の方が、応募を迷う人の背中を押します。取り組み→数字→発信までをワンセットで設計してください。
Q. 経営層の理解が得られません。どう説得すれば?
理念より数字で語るのが近道です。「直近3年の女性の離職者数×採用・教育コスト」を出すと、両立支援は福利厚生ではなく損失対策だと伝わります。人手不足・採用難という経営課題の解決策として提案してください。
Q. 男性社員の育休も関係ありますか?
大いにあります。男性の育休取得は、くるみん認定の要件や公表義務の対象であるだけでなく、「男性も休める職場」は女性にとっても働きやすい職場のシグナルになります。女性活躍と男性育休は、実務上ワンセットで進めるのが近道です。
Q. 小さな会社でも何か始められますか?
行動計画が努力義務の規模でも、えるぼし・くるみんの取得や助成金の活用は可能です。まずは育休取得実績づくりと、労働時間の見える化から始める企業が多いです。